第1章:発声のメカニズム
声が作られるメカニズム

「声とはどのように出ていますか?」と質問をすると、「喉で音を出して声になる」と答える方がほとんどです。それは間違いではありません。ただ、これから自分自身で自分の声をコントロールしていきたいと思っている皆さんは、もう少し詳しく把握しておきましょう。「ボイストレーニングと声質」の項でも書きましたが、もう一度こちらでも触れておきます。声が作られるメカニズムは、声帯を息で震わせて、その振動を共鳴させて声になります。
声帯の動き
声帯は喉仏の中にあって、2本の帯(声帯)が開いたり閉じたりします。声帯が開いている時には音は鳴りません。息だけを「ハー」とはいてみてください。これは声帯が開いている状態。では、「アー」と声を出してみてください。これが声帯が閉じている状態です。喉仏の辺りがビリビリと振動していると思います。声帯が閉じて、息によって摩擦が起こり、振動することによって音が鳴ります。これを声帯原音と言います。原音というだけあってこれは声を作るもとの音にすぎず、これだけでは大きな音にはなりません。ここで「共鳴」が大きな役割を果たします。
共鳴について
エレキギターとアコースティックギターを想像してみてください。エレキギターはアンプをつながずに弦をかき鳴らすと、ペラペラの音になります。一方アコースティックギターはアンプをつながずに弦をかき鳴らしても、ある程度大きな音が出ます。この違いは、「共鳴」です。アコースティックギターは本体に空間があるので、あの中で弦の振動が共鳴して大きな音になります。人間の声も同じで、声帯の振動が、体の中の空間で共鳴して大きくなって、初めて声となります。その空間とは、口腔・鼻腔・咽頭・口頭などの共鳴腔です。よく、「喉を開けて」とか「口を大きく開いて」などというのは、この共鳴をしっかりと響かせると言う意味もあります。声を出す時は、息や声帯だけではなく、この共鳴を意識することがとても重要となります。