第1章:腹式呼吸とは?
寝ている時は自然と腹式呼吸になる

呼吸は大きく分けて胸式呼吸と腹式呼吸の2種類に分けられます。胸式呼吸とは、肺の上部で息の出し入れをすることです。息を吸うと胸や肩が息で押されて膨らんでくる感じがあります。特に深呼吸をした時や、運動をした後に息切れしている時などが分かりやすいと思います。それに対して腹式呼吸とは、肺の深い部分(下部)で息の出し入れをしますので、肺の下にある横隔膜の運動を伴います。肺の下の方に息が入ると、その下にある横隔膜が押し下げられ、さらにその下にある内臓が圧迫されてお腹や脇腹や背中が膨らんできます。それがお腹で呼吸しているように見えるので腹式呼吸と呼ばれています。お腹には直接息が入っているわけではありません。寝ている時やリラックスしている時は自然と腹式呼吸になります。
歌うときに、腹式呼吸の方が良い理由

では、なぜ歌には腹式呼吸が良いとされているのでしょうか?声を出す時は息をはいて声を出すので、そのために体の中にまず息を取り込んで貯める必要があります。その貯めた息をはいていくことで声のコントロールをします。では、息を胸式呼吸で(深呼吸をするようにして)少し多めに吸って止めてみてください。胸や肩に力が入りませんか?この状態で声を出し続けたり、歌を歌うのは不自由ですよね。すぐに息をはきたくなってしまうと思います。ということは、息を貯めておきにくいのです。そのため、息を一定にはいたり、ちょっとずつはいたり、強くしたり弱くしたりなどのコントロールがしにくくなってしまいます。単純に腹式呼吸に比べて胸式呼吸の方が入る息の量が少ないので、息を使う効率が悪く、ロングトーンなどにも不利になります。また、胸式呼吸で息を吸った状態でいると、喉の周りが圧迫されて狭くなってくる感じがしませんか?これによって、声が響く空間が狭められてしまい、響きの少ないペラペラの声になりやすくなってしまいます。
やっぱり、腹式呼吸
まとめると、胸式呼吸だと息のコントロールがしにくいため、声帯に必要以上の息が当たってしまい声帯を痛めやすい、声帯のコントロールがしにくくなってピッチが狂いやすい、高音や低音が出しにくい、声の強弱をつけにくい、ロングトーンが安定しにくい、息が続かないなどの状態が起こります。また、胸や肩に力が入ったり喉の辺りが狭くなってしまうので、声の響くところが邪魔されて響きの良くない声になってしまいやすい、肩・胸・喉などの筋肉が必要以上に疲れてしまうなどのデメリットもあります。それに対して腹式呼吸だとその逆で、息を貯めておくことが楽で息のコントロールがしやすくなるので、声帯を鳴らすのに必要最低限の息で効率よく声を出すことが出来る、声帯のコントロールもしやすくなるのでピッチを合わせやすくなる、声の高低や強弱が自由になる、息が安定するのでロングトーンも安定する、息も続きやすくなる、上半身や喉周りが共鳴しやすくなり響きの良い声になる、上半身に力が入らないので声を出すのが楽になるなどのメリットが沢山あります。